SERIE A 6^ GIORNATA セリエA第6節


昨シーズンから、日本唯一の海外サッカー週刊誌『footballista』に、毎週のセリエAの総括記事を寄稿しているんですが、紙幅の関係で、書きたいことが書き切れないことが多かったりします。そこで、時間がある時にはこのブログに捕捉を書き足すことにしようかと思います。あくまで捕捉ということなので、できれば本誌の原稿も読んでいただけると嬉しいです。ちなみに、同紙では、同じ版元が出している『El Golazo』から引っ越した連載コラム「カルチョおもてうら」も継続中。その一部は、最近始めたアーカイブ「Tifosissimo!!! archive」で逐次公開中(週数回更新しています)なので、こちらも是非チェックして下さい。

というわけで、先週末のセリエA第6節。
水曜発売の『footballista』に書いたのは、ローマがなぜ勝てないのか、ミランはなぜ負けるのか、ユーヴェはなぜ勝ってしまうのか、という話でした。
ローマとミランはともかくとして、ユーヴェ。カリアリ戦、ローマ戦、そして今回のトリノダービーと、もう審判が味方してくれないにもかかわらず、このチームはやっぱり、最後の最後にゴールを決めて結果をもぎ取ってしまうわけです。
ブッフォンは「それがこのチームのDNAだ」といい、ラニエーリ監督は「いいサッカーをしようとか、そういうことは考えず、ひとつひとつのボールを巡って諦めずに戦い続けることだけを考え、最後まで勝利を諦めないのがユヴェントスの文化だ」と言っています。
振り返ってみれば、トラパットーニとプラティニの時代から、リッピ、カペッロの時代まで、ユーヴェが惚れ惚れするような美しいサッカーを見せたことなど一度もありません。例外は、ヴィアッリ、ラヴァネッリ、デル・ピエーロの3トップを擁して、7敗もしながらスクデットを勝ち取ったリッピの1年目(94-95シーズン)くらい。それも含めて、「プロヴィンチャーレ(地方都市の中小クラブ)の魂を持ったビッグクラブ」というのが、このチームに常について回る賛辞でした。勤勉さ、謙虚さ、執念深さ、規律。これらはすべて、北イタリア、とりわけピエモンテ、ロンバルディア、ヴェネトといったアルプス山麓地域の人々が、連綿と受け継いできた価値観でもあります。
それと対照的なのが、あれだけ質の高い、スペクタクルなサッカーをコンスタントに見せているにもかかわらず、ここ3試合でわずか2ポイントしか勝ち点を挙げられなかったローマ。つまらないミスによる馬鹿げた失点とか、興奮、不安、焦りなどに振り回され我を忘れて前がかりになりカウンターを喰らう迂闊さとか、そういうところはローマ人気質そのものだったりして。

このトリノダービー、そして先週のジェノヴァダービーと、久しぶりにイタリア四大ダービーがすべてセリエAに戻ってきた——のはいいんですが、トリノでもジェノヴァでも、試合前にスタジアムの外で両チームのウルトラスが暴れて、警官隊が実力行使で鎮圧に乗り出す騒ぎになりました。
2月のカターニア暴動の後、内務省がウルトラスに対する締めつけを強める一方で、スタジアムの安全性強化を義務づける法改正や通達を公布し、その後とりあえず事態は鎮静化したのですが、ゴール裏という場所は——イタリアに限らずヨーロッパ、南米すべてに共通することですが——、結局のところ社会そのものが抱えている様々な問題(失業やワーキングプアからドラッグまで)を若者の無軌道な集団的暴力という形で顕在化させる触媒みたいなものなので、一時的に抑圧することはできても、フーリガン問題を根っこのところから解消することは非常に困難、というかおそらく不可能です。スタジアムから暴力を排除することに成功したイングランドにしたって、郊外の治安は10年前と比べると劇的に悪化しているらしいし。このあたりの話も、昨シーズン中『footballista』に何度か書いたので、追い追いアーカイヴに上げて行く事にします。

そういえばこの週末は、自転車ロードの世界選手権もありました。男子エリートの結果は、イタリアの英雄、イル・グリッロ(こおろぎ)ことパオロ・ベッティーニの昨年に続く二連覇。ジーロ・ディタリアやツール・ド・フランスなど長丁場のステージレースでは、無駄なアタックを繰り返しては最後の最後でステージ優勝を逃す愛すべきおっちょこちょいにしか見えないかもしれませんが、ワンデイレースに関しては、リエージュからミラノ=サン・レモ、アテネ五輪まで、ビッグレースで常に主役を張り続けている世界屈指の大御所です。
今年の世界選手権は、主催国のドイツがドーピング問題に神経質になって、かつての偉大なライダーであるエディ・メルクスやジャンニ・ブーニョに対してまで、ドーピングが氾濫していた時代にキャリアを送ったという理由で、公式行事への参加を一切拒否するという頓珍漢な過剰反応ぶり。それに引っ張られたのか、主催者であるUCI(国際自転車連盟)も、ドーピング先進国(?)であるイタリアやスペインを目の敵にしつつ、しかし出てくれないと興業として困るから何人かスケープゴートを出して帳尻を合わせようと言わんばかりの、姑息極まりない振る舞いに終始した印象があります。
レースまでの1週間は、ドーピングの嫌疑としてはともに「灰色」(かなり濃いかも)であるヴァルヴェルデ(スペイン)とディ・ルーカ(イタリア)、そして灰色の度合いがフツーくらいの(他の大半のトップライダーと同じということです)ベッティーニといった優勝候補が、出場を認める認めないというドタバタの茶番劇に巻き込まれ、揺さぶりをかけられる(?)という事態が続きました。
UCIが言い募っていたのは、ベッティーニはDNA検査その他を受け入れる反ドーピング宣言念書へのサインを拒否しているから、出場は認められないという話です。ベッティーニが念書にサインしていないことは事実ですが、それは反ドーピングをめぐる諸条項に同意していないということではなく、それらにはすべて同意するが、違反が発覚した場合に支払う罰金(年収1年分)は、UCIではなくどこかの慈善団体に行くようにしてほしいと要望していたことが理由。UCIはカネへの執着からベッティーニに嫌がらせをしている、と解釈されても仕方がない、低レベルのブラフだったのでした。
おまけにレース当日はご丁寧に、スペインとイタリアの宿舎にのみ、抜き打ちのドーピング検査まで入っています。朝7時に叩き起こされて採血その他に応じたその日の午後、7時間走った末にゴールスプリントで信じられない伸びを見せて優勝し、ゴール直後にライフルを構えるポーズを見せたベッティーニは、それについて「誰を狙ったというよりも、この1週間僕たちを邪魔し続けてきた連中全体、言ってみれば群衆に向かってぶっ放したような気分だった。狙われたと感じた人はやましいことを抱えてるってことだね」と皮肉たっぷりにコメントしていました。■

Posted: 火 - 10月 2, 2007 at 02:14 午前        


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