IL CALCIO TRUCCATO SI SVELA 強制捜査のゆくえ


木曜日に数百人を動員し、セリエA、B(+α)の計53クラブに対して一斉に行われた財務警察の強制捜査は、その後連日マスコミを賑わせています。興味深いのは、スポーツ紙よりもむしろ一般紙の方が扱いが大きいこと。Corsera、Repubblicaなどが2面と3面を一杯に使って大きく取り上げ、さらにスポーツ欄でも触れているのに対し、スポーツ紙はGazzetta, Corsport/Stadioとも、1ページにも満たない申し訳程度の扱い。
これはおそらく、取り上げれば取り上げるほどビッグクラブ(だけじゃありませんが)に不利な材料がたくさん出て来て、火に油を注ぐことになりかねないので、あまり触れずにおこうということなのではないかと推測します。ドーピング問題の追求と同じで、「業界の誰にとっても利益にならないことはやらない」という“大人の判断”なのでしょうが、そんなことをしても無駄なことはいうまでもありません。一般紙にとってはこれほど格好のネタはなく、特に販売部数をめぐって熾烈な競争を繰り広げている前述の大手2紙(長年最大部数を誇ってきたCorseraにRepubblicaが迫っている)は、どちらも非常に力を入れて報道しています。取り上げられている話の大部分は、すでにいろいろな形で表に出ているものですが、改めてひとまとめにするとなかなか壮観(?)です。
詳しい話はここに収まる内容ではないので、別の形できちんとまとめたい(=仕事にしたい)と思っていますが、トレーラー風にいえば、「この何年か慢性的な赤字体質に陥って膨大な負債を生みながら、それを不正経理操作で隠蔽することを業界ぐるみで容認してきたイタリアサッカー界に、ついに司法のメスが入った!!」というところでしょうか。
思い起こして見れば、そもそもの発端は11月半ば、ローマにホームで0-4とボロ負けして、帰り道に怒ったサポーターから襲われかけたボローニャの筆頭株主(事実上のオーナーですが、本人はそう呼ばれることを嫌います)、ジュゼッペ・ガッゾーニ・フラスカーラが、「ローマは税金や社会保険料を1億ユーロも滞納し、選手の給料も何ヶ月も払っていないというのに、トッププレーヤーを補強して首位を走っている。ボローニャは、税金も保険料も給料もちゃんと払っているが、そのために補強に金もかけられず、降格の危機に瀕している。こんな不公平で理不尽な話があっていいはずがない。センシ会長は、うちがローマサポーターのために提供したチケット代すら支払っていない」とぶちまけたことでした。
ボローニャは10試合を消化したこの時点で降格圏内どっぷりの16位(1勝3分6敗・6ポイント)に低迷しており、ガッゾーニはクラブの売却も真剣に考えていたようです。それもあってか、その直後から、税理士や弁護士を動員して内々に他のセリエA各クラブの決算内容をチェックしたレポート(もちろん告発用)を作成させはじめました。これがマスコミ(La Repubblicaボローニャ支局のジョヴァンニ・エジーディオ記者)にキャッチされたのが年末くらい。同紙、そして同じグループの週刊誌L'Espressoが1月初めに、ガッゾーニのインタビューとともにこのレポートの存在をすっぱ抜きました。
しかしちょうどボローニャはその頃から、冬のメルカートで獲得した中田のおかげで成績が上向き始め、降格圏内から脱出します。ガッゾーニの怒りもそれに連れて納まったようで、2月に入ってからはこのレポートの噂もほとんど聞かれなくなりました。例によって「大山鳴動して鼠一匹」(も出ず)というイタリアらしい結末になるかと思っていたら、ここに来てこの騒ぎ。今回のガサ入れを指揮したのはローマの検察なのですが、責任者のシルヴェリオ・ピーロ検事が、マスコミの報道でこのレポートの存在を知ってガッゾーニに提出を求め、入手したそのレポートの内容を元に今回の捜査に踏み切ったということのようです。
捜査の対象になっているのは1999年から2003年までにセリエA、セリエBで戦ったすべてのクラブの、5年間の決算内容。ひとことでいえばクラブの不正経理を暴くことが目的なのですが、内容は多岐に渡っており、虚偽の決算やら公文書偽造から、移籍金の水増し、裏金による年俸の支払い、特定の代理人への法外な報酬まで、ありとあらゆる話が含まれている模様。関連でいくつかの有力代理人の事務所(もちろんGEAを含む)にも強制捜査の手は及んでいます。ユーヴェ、ミラン、インテルといった、一見すると優等生のビッグクラブも、実はいろいろと脛に傷持つ身なのですが(聞いたこともないプリマヴェーラの選手に高い値段をつけて等価交換し、帳簿上の利ザヤを稼ぐとか、いろいろある)、そういう話も表に出てくるでしょうから、無傷で済むところはたぶんひとつもないはず。
今夜、RAIのスポーツ番組“Sport2 Sera”に電話で出演したガッゾーニは「今頃何人かの会長は私のことを呪っているかもしれないが……」といいつつ、こういう事態に問題が至ったことにまんざらでもない様子でした。とりあえず降格の危機は脱したことだし、今でもクラブを手放すつもりがあるのかどうかはわかりません。■

以下、どうでもいい豆知識。ガッゾーニを紹介するときによく「ミネラルウォーター産業で云々」と紹介されていますが、これはあまり正しくありません。ガッゾーニ家が経営する「ガッゾーニ1907」が急成長したのは、まだ先代が社長だった1950年代。ただの水道水を発泡性の水に変える魔法の粉「イドロリティーナ」の大ヒットによってでした。まだ発泡性のミネラルウォーターが庶民にとって高嶺の花だった時代、赤と青のふたつの粉を入れるだけで水が泡立つというのは、とても魅力的なことだったらしいです。サッカリンとか森永ヒ素ミルクとかが巷に氾濫していた高度成長期に生まれ育ったぼくは「渡辺の粉ジュース」というのを記憶しているのですが、要するにあれとおなじ原理でしょう(といってもわかるのはオーバー40だけでしょうが)。ちなみに、そんなものは誰も買わなくなった今「ガッゾーニ1907」は、大豆レシチンとかノンシュガー甘味料とか、そういう健康食品関連を本業にしています。地元の名士にありがちなことですが、この会社の他に、地元のローカルTV局の筆頭株主だったり、地元紙に出資したりもしているようです。ボローニャを買ったのは、クラブが倒産して裁判所で競売にかかった93年。事実上タダで手に入れて、今は2000-3000万ユーロの価値になっています。そのためにどれだけ投資したかはわかりませんが、ここ7〜8年の動向や言動を見ている限り(サポーターからは常にどケチ扱いされています)、得はしていないかもしれないけれど大きな損はしていないだろうという気がします。

Posted: 日 - 2月 29, 2004 at 01:14 午前        


©