Juve investimento speculativo
ユヴェントスの焦り
ひと夏を通じてずっと低調だったイタリアの移籍マーケットですが、移籍期限が迫った8月31日になって各チームがバタバタと動き回り、駆け込み補強が相次いで、閉店間際のデパ地下のような騒ぎになりました。
動きが一番派手だったのはユヴェントス。ローマと散々駆け引きを繰り返した末にエメルソンを高値で買い取らされてから、1ヶ月以上動きらしい動きがありませんでしたが、土壇場に来てカンナヴァーロ(これは予想通り)、イブラヒモヴィッチ(これは意外。しかし1900万ユーロは割高)を補強して、何とか表向きミラン、インテルに対抗できるだけの陣容を調えています。
ユーヴェはこの6月期決算で、1720万ユーロという赤字を計上しています。当期利益段階での赤字は、(たしか)96年以来8年ぶりですが、昨シーズンも経常段階では3000万ユーロの赤字だったので(不動産のカラ転売で帳簿上の利益をひねり出して当期利益は220万ユーロの黒字)、実質的には2年連続。しかも、ミランやインテルと違って、オーナーのアニエッリ家はもう10年近く前から、赤字を補填するために大切な私財を投じたりはしないという姿勢をはっきりと打ち出しているので、この赤字は実質的な損失として財政をずっしり圧迫しているはず。
にもかかわらず、この移籍マーケットの収支は、売却益(ディ・ヴァイオ、ブリーギx1/2、マレスカx1/2、キエッリーニx1/2、ミッコリx1/2)が3280万ユーロ、投資(エメルソン、イブラヒモヴィッチ、キエッリーニ)が5120万ユーロで、1840万ユーロもの赤字になっています。確かに、この補強がなければ戦力的にはかなり厳しかったかもしれませんが、クラブの財政からすれば、今回のメルカートは「投資」というより「投機」に近い賭けかもしれません。
例えば、これでもしチャンピオンズ・リーグでベスト4くらいまで進出し、セリエAでも最後までスクデット争いに絡むことができれば、おそらく投資の元もかなりのところまで取れるのだろうと思いますが、逆に、バイエルンとアヤックスに足を引っ張られてグループリーグ敗退でも喫した日には……。
でもまあ、個人的にはイブラヒモヴィッチはいい買い物だったと思います。アヤックスからエースストライカーを分捕ったというのもありますが、それはそれとして、なにしろまだ23歳で伸びしろはたっぷり。センターフォワードとして最前線で基準点になることもできるし(アヤックスでは大体そうでした。キープ力とポストプレーは抜群)、セカンドトップとしてプレーし、サイドに流れてMFが走り込むスペースを作ったり、アシストに回ったりすることもできる(ラーションと組んだスウェーデン代表がそう)。つまり、トレゼゲの代役も、デル・ピエーロの代役も務まるということです。
大体、ユーヴェがディ・ヴァイオだけじゃなくミッコリまで切った(共同保有の買取りオプションはフィオレンティーナにあり。ちなみにキエッリーニのそれはユーヴェが確保しています)というのも、セカンドトップはデル・ピエーロかイブラヒモヴィッチで十分、という判断からだと思われます。いや、中盤にネドヴェドやエメルソンのように積極的に前線に走り込むプレーヤー(スウェーデン代表でのリュングベリと同じ)がいることを考えると、むしろデル・ピエーロを控えに追いやってトレゼゲのパートナーになっちゃう可能性もあり。ともかく、カペッロはローマ時代からイブラヒモヴィッチを欲しい欲しいと言っていたわけで、どういう風に起用するつもりなのかというのは、かなり興味深い注目点です。
どうでもいい話ですが、イブラヒモヴィッチという名前を聞くたびに、反射的に頭の中で、故フレディ・マーキュリーの雄叫び(アルバム「Jazz」のA面1曲目冒頭)が鳴り響いてしまいます。イタリアでの登録名はズラタンにしてもらえると有難いんですが。
それはともかくモッジとカペッロ、一番の穴といわれてきた最終ラインに、なんとインテルからファビオ・カンナヴァーロを引っ張りました。まあユーヴェにはモッジ、フェラーラというナポリ時代の親分と兄貴分がいて、ピッチ上で組むのがパルマ時代の盟友トゥラムとブッフォン、しかも回りにはイタリア代表のチームメイトがごろごろ、という環境ですから、もうすでにすっかりチームに馴染んでいることとは思いますが、問題はこの2シーズンの低調なパフォーマンスを象徴してきた脛の亀裂骨折です。
もし本当に完治しているのだとしたら、果たしてインテルがここまですんなりと、タダ同然の条件(サブGKとの交換)で、直接のライバルにイタリア屈指のセンターバックを差し出したりしたでしょうか。少なくとも、マンチーニをはじめとするインテルのテクニカル・スタッフが、カンナヴァーロのコンディションを悲観的に見ていたであろうことは、想像に難くありません。逆にユーヴェは、完治している方に賭けたということになのでしょう。この賭けの結果がどちらに転ぶかは、ユーヴェの今シーズンを左右するかなり大きなファクターになるような気がします。近々、カンナヴァーロ本人に取材できるはずなので、その時にちょっと突っ込んで訊いてみますか。■
Posted: 水 - 9月 1, 2004 at 11:41 午後