
◆フランス戦でPK負けを喫した後のマルディーニ監督のコメントは次のようなものでした。「3度も続けてPK負けで去らなければならないとは、呪われているとしか思えない。しかし、選手たちに対しても、自分に対しても、責めるべきことは何もない。1試合も落とすことなくベスト8ワールドカップを終えたのだし、PKは運の問題だ。戦いには満足している」◆一方、デシャン、ジョルカエフ、デサイーなど、イタリアでプレーするフランス代表選手たちは、口を揃えて次のように語っています。
「我々は、別にディフェンシヴに戦ったわけではない。2人のフォワードに加えてモリエーロも使った布陣のどこがディフェンシヴなのか教えて欲しい。我々が戦ったのは、開催国で優勝候補のフランスだった。彼らは強かったし、我々はこれ以上のことはできなかった。こだわるようだが、我々はこの試合で何の間違いも犯していない。フランスに一方的に攻められたと言うが、パリウカがファインセーヴをしなければならない場面なんて、一度もなかったじゃないか。彼らは攻めたのではなく攻めようとしただけだ。我々はそれをよく食い止めた。大きなリスクを犯すことなく、0-0で試合を終えたのだから、いい試合をしたという以外にないだろう。結果として、運がなかったのは事実だが」
「デルピエーロを選んだのは間違っていなかったと思っている。私は、彼は今回もいいプレーをしたと思う。終わった後に、もっと早くバッジョを出せば良かった、などというのは簡単なことだ。でも残念ながら、私は始まる前にメンバーを決めなければならないんだ」「我々はイタリアの攻撃陣の怖さをよくわかっているから、彼らの攻撃を恐れていた。でも彼らは、点を取って勝つサッカーではなく、点を与えない負けないサッカーに専念して、まったく攻めてこなかった。これは我々にとっては大きな贈り物だった。正々堂々と点を取りに入った我々が、イタリアの守備がすばらしかったのでそれには成功しなかったけれど、最終的にベスト4に進んだのは、だから正しかったと思う」◆試合直後、代表の最高責任者でもあるイタリアサッカー協会のニッツォーラ会長は、マスコミのインタビューに対して「マルディーニ監督の立場を議論するつもりはない」と、続投を保証するようなコメントを出しました。しかし、その後数日を経て、事態は別の方向に動き出しています。マスコミは、「点を取られないこと」に固執するあまり、偶発的なカウンター以外に「点を取る」術を持ち得なかったマルディーニ監督の戦術に対して、「カテナッチョの終焉」という言い方で、明確な批判を浴びせています。セリエAの何人の監督や代表OBなど、サッカー界で発言力を持つ人々の多くも、マルディーニ監督に最大の敬意を払いながらも、採った戦術に対しては否定的な声が多いのが現状。この空気を敏感に察知してか、協会内に強い支持基盤を持つとはいえない(つまり逆風に抗してマルディーニ監督を守ることが自らの座を危うくすることにもつながりかねない)ニッツォーラ会長は、「マルディーニ監督の続投を保証するような発言はしていない」と、態度を翻しています。今のところ、状況は少しづつマルディーニ解任に向けて動き出している印象です。
◆これは金曜日に更新される「2002JAPAN」にも書いたことですが、マルディーニ監督の「保守反動路線」は、従来のイタリアサッカーの伝統から断絶したサッキ前監督の「急進路線」への「アンチ」として誕生したものでした。しかし、もはやセリエAの大半のチームが、ゾーンディフェンスを基本とした、いわゆる「モダーン」な戦術を採っている現在、マルディーニ監督の、リベロ(というよりもスイーパー)とマンマークを基本とした「伝統的ディフェンシヴ・サッカー」が、逆に選手たちのプレースタイルと乖離して来ていることも事実です。
実際、「ゾーン育ち」のネスタやカンナヴァーロは、当初、フルコート・マンマークのシステムに明らかに戸惑っていました。最終的に、カンナヴァーロ、コスタクルタ、ベルゴミの3人で組んだイタリアのDFラインが、マンマークを前提としながら必要に応じて柔軟にマークを受け渡す、いわゆる「zona sporca」(汚れたゾーン)と呼ばれるシステムに変化していたのも象徴的です。
そうしたこともあって、マスコミの間では、次期監督に求められる資質として、「サッキほど急進的ではないが、現在のイタリアサッカーの現状(つまりセリエAで支配的な戦術)と乖離していない、ゾーン・ディフェンスをベースにした戦術を採る監督」という条件を挙げる声が多くなってきています。また、代表監督は、フルタイムでチームを作り上げることができるクラブの監督とは異なり、選んだ選手を短い時間で組織し、機能させなければいけないところから、自らのシステム・戦術に固執しない柔軟性も重要な条件。さらに、少なくともサッキのように国民やマスコミの反感を買うことがないパーソナリティ、協会が払えるレベル(年俸1億円前後)の給料を求めないことなど、制約条件は少なくありません。
その中で、次期監督の候補として少なくとも可能性があるとして名前が挙がっているのは、ディノ・ゾフ(ラツィオ会長)、ネヴィオ・スカーラ(前ボルシア・ドルトムント)、オッターヴィオ・ビアンキ(元インテル、ナポリ、現在は協会のユースセクション責任者)、ファビオ・カペッロ(前ミラン)、カルロ・アンチェロッティ(前パルマ)といった面々。実は、誰もが納得する「理想」は、ユヴェントスのマルチェッロ・リッピなのですが、彼はユーヴェとの契約を1年残していることが最大のネックになっています。ポスト・サッキの最有力候補だったトラパットーニも、フィオレンティーナの監督に就任したばかりで今回は対象外。
今のところ(というかおそらく最後まで)、最有力候補はゾフ。82年ワールドカップ優勝時のキャプテンで、スクデットはないもののユーヴェ、ラツィオの監督として好成績を収めたという経歴は、「格」としては文句なし。ポスト・サッキの時には、監督を退いてから数年経っていることが大きなマイナス要因となりましたが、それも昨シーズン、ゼーマン解任の後を受けて、ガタガタだったラツィオを見事に建て直した(しかもゼーマンの攻撃的なゾーンサッカーを修正し、攻守のバランスをとりながら)ことで、解消されています。さらに、ラツィオがジェネラル・ディレクターとして元男子バレー代表監督のフリオ・ヴェラスコを獲得し、会長としての立場が微妙なものになっていることも、今となってはむしろ好都合。本人は、基本的に「ノーコメント」を守りながらも、「代表監督の座に惹かれるのはプロならば当たり前」と、意欲を明らかにしてもいます。今後の展開を見守りましょう。◇おそらく読者の皆さんは、中田のペルージャ移籍問題についての情報を期待されていると思います。イタリアでは、7/7に、両者は合意に達した、と報道されました。7/6のCorriere della sera紙、Corriere dello sport紙は、中田は7/5からペルージャ会長、ルチャーノ・ガウッチの持つ城(!)の客となっていること、合意は近いことを報じ、さらに「スポンサー・オペレーション」にも言及していました。こちらでの扱いは、(当然ながら)大きいものではないので、それ以上の情報は今のところわかりません。
それはともかく、ペルージャというのは、実のところなかなか難しいチームです。その辺りの話は、数日中に「98-99シーズンに向けて」のコーナーで紹介したいと思いますので、お楽しみに。バックナンバーへ 当ページに対するご意見、ご感想をお待ちしています(こちらまで)。